ときよとまれ

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力いっぱい3時間の中国vsアメリカ よくできた国策戦争映画『1950 鋼の第7中隊』

三時間は長いかと思ったが、飽きずに見た。途中トイレに立つ人、多数。意外な展開はあまりないので、戦闘が一段落したらトイレに行くといい。

 

朝鮮戦争の長津湖の戦いを中国志願軍とアメリカ軍から描く。

韓国軍と国連軍vs北朝鮮軍と中国軍のはずだが、アメリカ以外の国連軍や韓国軍と北朝鮮軍は出てこない。連携をとっている描写もない。英語と中国語しか出てこないのだった。

描きたいことだけ絞って描いてるので、とても見やすい。

中国vsアメリカを描くための時代選びや設定なので、何がどう描かれ、何が抜かれているかを考えながら見るのがいい。

 

中国強い、健気、人力という印象。

アメリカ軍は装備が最新で、食事もたっぷり(戦場で感謝祭をしてベーコンとか食べる)。中国軍は零下30度を綿入れ(上着)なし、じゃがいも三個を分けあって進軍。日本の戦争映画の描写と似ている。物資の不足は気合いで解決。東アジア的美徳なのだろうか。食糧、装備不足で戦場に向かわせる司令部は批判されない。アメリカ軍宣伝映画『トップガン マーベリック』ではこうは描かれないだろう。

あと人がすごい。人間がとにかくたくさん出てきて大迫力。

 

監督は三人。

チェン・カイコーツイ・ハークダンテ・ラム。三人もいて混沌としないのか、と思ったが、シーン担当をパッキリ分けて撮影しているようで混乱なし。冒頭など人間ドラマはチェン・カイコー、あと血肉が舞う肉弾戦とCGなどの遠戦で監督が分かれていそう。

音楽で、いまここがどんなシーンか(コミカル、感動的など)わかりやすく教えてくれる。

 

七人の侍』とか『プライベート・ライアン』のように、キャラクターの描き分けは類型的だが手際よい。

リーダー(頼れる中隊長)、参謀(英語独学、子どもがいる)、暴れん坊(ケンカっぱやい、新兵をからかう)、老兵(新兵の面倒を見る)、狙撃手(クール)、できるやつ(今は別の隊を率いているが第七中隊出身)、そして新兵(血気盛ん、リーダーの弟)。

新兵が経験不足から予想外の行動をとることで、緊張感が生まれ、新兵との関わりで、他の人物がどんな人かも描かれる。

 

課題演技的エピソードもあるようだ。毛沢東の息子の志願と戦死、米軍を待ち伏せしていた中国軍の凍死、陣地を守っていた部隊が全滅しかけたとき爆薬を抱えて敵陣地に走った兵士など。日中戦争の爆弾三勇士のような有名エピソードなのだろう。とくに後のふたつは唐突に入るので、あとから入れたのかもしれない。

この映画では毛沢東の息子は避難せず、本部に地図を取りに行って~、という描写だが、実際はチャーハンを作っていたところ空爆を受けたという説もあるようだ。料理してたっていいじゃないか、と思う。立派な死に方とかそうでないとか、決めないでほしい。

 

プロパガンダポイントとして権力者の息子が戦争にいくかは、大きいようだ。ロシアのペスコフ報道官の息子の件しかり、それを受けてチェチェン共和国のカディロフが子どもを従軍させるといった件しかり。

 

ロシア侵攻によるウクライナとロシアの大規模戦争が続いているなか、戦争映画を見る後ろめたさがある。現実の戦争でさえニュースやSNSで消費している。かっこいい活躍、立派な死に様にわくわくするのは現代の善とは遠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1950-movie.com