ときよとまれ

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流血して英雄は決意する 植民地支配者に抵抗せよ『RRR』

「バーフバリ」の監督の最新作。3時間。

途中インターミッションの表示が出るが、日本では続けて上映のようだ。なお、見せ場続きなので、トイレにいく暇はない。

 

普通のアクション映画5本分の見せ場、アクション、人間ドラマが詰まっていて相変わらず濃度がすごい。こんなの見てたら、他の映画は薄くて見ていられなくなってしまう。それでいて、とても見やすい。乱戦でも見せたいところが、バーンと目に飛び込んでくる絵作り。

 

イギリス植民地時代のインドで、イギリスに仕え警官として働く男と連れ去られた少女を取り戻しに来た森の部族の男が、巡り合う物語。

インドの神話ラーマ王子の物語などが下敷きになっているが、基本的には大英帝国帝国主義への抵抗の物語だ。

二人は流れる血とともに登場する。何度も血を流す。その後に、ようやく反撃にいたる。大英帝国の暴力に堪えた末に、立ち上がるのだ。

映画最後はダンスで締めくくられ、そこで映されるのは、イギリスへの抵抗活動に身を投じた人々。特に南インドの活動家や、武力によって対抗した人達が多いように見える。暴力やテロはよくない、というけれど、抵抗の声を届ける方法が当時ほかにあったのか、とも思ってしまう。

 

残念だったのは、「バーフバリ」では少ないながらも鮮烈だった女性のアクションシーンが、本作ではほぼないところ。女性のキャラクター性も薄く、インドの女性は堪え忍び、打たれ、待つ役回りだ。イギリスの女性は残酷(魔女)か優しい(聖女)かの二択。

そして、イギリス人女性と主人公の一人が恋に落ちるのだが、ダンスバトルシーンなどで、やや敵国の女を勝ちとったぞ感があって、気になった。

女性描写は本作ではいまいちだが、これは主題が男の絆であることと、近代が舞台なのが作用しているような気がする。

男性同士の絆を描くときは、女性は添えものになりがちだ。女性同士の会話もほぼない。

また、近代は女性を自由に動かしにくいのではないか。当時のインドがどうだったのかは知らないが、日本だと「ジェンダーの日本史展」で見たが、時代が下れば下るほど、女性の活躍の場は失われ、男性に対して従属的な存在と見なされていくという。イギリスでも同様だったろうし、インドでも同じなのかも、と思った。

男の母、姉妹、配偶者、恋人以外の女は存在しにくい。  

 

過去に植民地支配をしていた国の末裔としては、痛い映画でもある。大英帝国がしてきたようなことは、大日本帝国もしてきただろう。朝鮮半島で、満州で、南洋の島々で、東南アジアで。

英雄たちの活躍に心踊らせつつ、日本が支配した地域の抵抗運動についても考えたりした。

 

 

 

 

rrr-movie.jp

 

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