『イニシェリン島の精霊』は助演ロバ映画だったが、本作はロバが主人公をつとめる。サーカスで、パフォーマーの女性に可愛がられて暮らしていたロバEOは、動物保護団体に「保護」されて以降、牧場、処分場、サッカー場、貴族の邸宅などを遍歴する。
終始ロバ目線というか、ロバとともに時間と場所がうつろう。とくに擬人化されてないので、ロバが何を思っているかはわからない。でも映像にドキッとさせる美しさと迫力があり、「あ、食べた」「お、蹴った」など折々のロバの振る舞いを、動物観察のような感じで見ても、おもしろい。
途中、馬などいろいろな動物が出てくるが、それらと比べロバは映画にちょうどいい大きさなのかな、と思った。ひきで撮ってもある程度大きく見せられるし、人間と並べてもほどよいし、旅の途中でひろっても、なんとかなるサイズ(?)。
ロバのかわいそうな感じ、それは、どこまでいっても人間の世界に組み込まれてしまうことからくるからなのかもしれない。