ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

2024-01-01から1年間の記事一覧

ポジティブで社会派な映画『コール・ジェーン』

人工中絶が違法だった1960年代アメリカ、弁護士の夫と高校生の娘と暮らす裕福な主婦ジョイは、妊娠とともに、心臓病が悪化し倒れる。このままでは命も危ういと、悩みながらも中絶を望むが、病院の理事会では手術は却下されてしまう。困り果てたときに目にし…

国立アイヌ民族博物館 プンカㇻ協働展示「アイヌの建築と工芸の世界- チセ、マキリ、アットゥㇱ -」@国立近現代建築資料館

チセは、アイヌの言葉で家のこと。 アイヌの伝統的な建築、工芸、素材となる植物などを取り上げた展示。鞘や柄に彫刻が施されたマキリ、木の繊維で作られた布など、建築だけでなく、家のなかにあったもの使われたものも、さまざま見られる。 展示の冒頭や、…

「ガラスの器と静物画」@オペラシティアートギャラリー

「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」をみた。 ガラス作家山野が、画家が言葉で表現したガラスの器をつくり、画家はそれを描く。ガラスの器と絵、写真の展覧会。 なんだか相互作用の不思議さ、言葉で描かれたガラス器が実体化している不…

大将のおまかせで 映画「アーガイル」

スーパースパイ「アーガイル」の活躍を描く小説で人気の作家エリー・コンウェイは、次の作品の最終章に行き詰まっていた。アドバイスをくれる実家の母のもとにに向かったエリーは、途中自分のファンだという男に出会う。彼は自分は実際のスパイだと名乗り、…

人間的であろうとする男性がホモソーシャルを降りる話 映画「アパートの鍵貸します」

保険会社のサラリーマン、バディ(ジャック・レモン)は、不倫の情事用に既婚の上司たちに自分のアパートを貸している。よい評価、出世と引き換えだ。しかし、新たに部屋の貸し出し先に加わった人事部長のお相手は、バディが思いを寄せるエレベーターガールの…

錦糸町でも飲めばいいのに平山さん 映画「PERFECT DAYS」

わたしは、あまり好きではなかった。 つつましく暮らす役所広司なら「すばらしき世界」の方が、わたしは好きだ。 以下、気になったところを書くので、この映画を好きな人は用心されたし。 本作「PERFECT DAYS」は広告映画だと思う。 なんの広告かというと、…

チュ・ジフン七変化 映画「ジェントルマン」

捕まった探偵が、自分が巻き込まれた事件について語り始めるが、嘘発見器の判定は「嘘をついている」。二転三転する事件の真相は? チュ・ジフンの魅力たっぷりのコンゲームもの。 悪役の造形が、韓国社会を反映しているようで面白い。 犬もかわいい。 気楽…

最高です、ソクト刑事 映画「犯罪都市 NO WAY OUT」

シリーズ第三段。 今度の敵は、日本のヤクザと、癒着した汚職刑事。 ハイパーと呼ばれるドラッグが日本から持ち込まれ、広がってしまう。マ・ドンソク演じるソクト刑事は、事件を追い始めるが、薬は、暴力団の横流し品で、東京の組長はその回収と横流しした…

音楽が希望になる 映画「シング・ストリート」

不況のアイルランド、離婚秒読みの両親、学費が払えず荒れた学校に転校した主人公は音楽と友達と出会い、恋、自由、未来を夢見るようになり、行動を起こしていく。 監督の自伝的映画で、当時の音楽がたくさん使われる。主人公が新しいバンドにハマるたび、自…

時間がたくさん含まれる映画「瞳をとじて」

前半、けっこう寝てしまった。 つまらない訳ではなく、心地よい。 一瞬たりとも目が離せない、緊張が続く映画とは違い、寝ても許してくれそうな感じがした。 もと映画監督の作家は、ある映画の撮影中に失踪し、今も行方のわからない俳優を探すため、テレビ番…

絢爛豪華な映画「哀れなるものたち」

身投げした女性の体に、胎児の脳を移植し、よみがえさせられたベラ。彼女は、その手術をした天才外科医のもとで養育されるが、世界を体験するために、遊び人の法律家と旅にでる。 どこを見ても美しい密度のある映像。ベラの纏う服や、部屋の内装、現実とはど…

ブチ上がる悲劇「イザボー」

日本発でたぶん海外への輸出も視野にいれているミュージカル。 100年戦争で疲弊したフランス、外国から国王に嫁ぐも、王は狂気に陥り、困難な運命に翻弄され、フランス最悪の王妃と呼ばれたイザボー。彼女の人生と決断を、息子シャルル7世と、イザボーと同…

わからず「繡と織」@根津美術館

展示点数少なめ、わたしには良さがいまいちわからなかった。 庭も含めて楽しみたい人向けかな。 www.nezu-muse.or.jp

ドーナツ食べたい映画「ファースト・カウ」

アメリカ西部開拓時代。たまたま知り合った白人料理人のクッキーと、中国人移民のキング・ルーは、その地域に連れてこられた最初の乳牛のミルクを盗み、入植者たちにドーナツを売り始める。ドーナツは評判を呼ぶが。。。 滑らかにうつろう風景と人生。事件も…

映画「 ◯月◯日、区長になる女。」

杉並区にくらす劇作家、監督が、長く住んだマンションが道路予定地であると知り、区議会に興味を持つ。そして、道路計画を見直す区長を求める市民団体が擁立した候補者、岸本聡子と出会い、その選挙戦に並走することになっていく。 日常生活は、すなわち政治…

技巧を凝らして描く人の性「春の画」

浮世絵は印刷され公に流通するが、春画は贅を凝らした贅沢品。 その美しさ、人の性、生命力を描くのが春画で、これ程多彩だったのかと、驚く。 春画を語る人が、なんだかちょっとわくわくしてる感じなのもよかった。 www.culture-pub.jp

よくわからない、そこがいい「白井美穂 森の空き地」@府中市美術館

好きそうな雰囲気だったので、見に行ったが、 正直、ぜんぜんピンとこなかった。 でも、それでよいのだと思う。 現代の人間の世界は、わかりやすいものがたくさん流通していて、わからないもの、わかりにくいものは黙殺されている。 わからないものが、世界…

見せ方がうまい 音楽劇「エル ガレオン」

人気実力派声優が、幽霊船で現れる伝説の海賊たち(黒ひげ:大塚明夫、キッド:中村悠一、ダンピア:梅原裕一郎、フローチェ:高垣彩陽)と、不老不死の研究のためにそれを捕らえようとするイギリス王太子(蒼井翔太)、迎え撃つイギリス海軍(ネンソン提督:諏訪部順…

「豊嶋康子 発生法ー天地左右の裏表」「MOTアニュアル2023」@東京都現代美術館

「豊嶋康子 発生法ー天地左右の裏表」 一人の人がこの社会のなかで生きている、そのこと自体が社会に痕跡を残し、世界を変容させ、新たなものを生成する。 言われてみれば、それはそう、という感じなのだが、作品「書体」を見てちょっと感動した。 豊嶋さん…

美しくゆたかな映画「青いパパイヤの香り」

トラン・アン・ユン監督のデビュー作とは思えぬ完成度の映画。 しっとりしたベトナムの空気を感じる。 1950年代のサイゴン、働き始めた少女ムイの目から奉公先の人間模様、そして成長したムイの恋を描く。 飾り窓や柵、扉越しに撮される重層的な風景、それは…

音が怖いので映画館推奨「トーク・トゥ・ミー」

母をオーバードーズで亡くしたミアは、気晴らしに友だちとパーティーに出かけ、そこで話題の降霊ゲームをやってみる。キャンドルに火をつけ、不気味な手の置物を握って「トーク・トゥ・ミー」と唱える。すると霊が現れ、それを自分に招き入れるのだ。ただし…

極彩色の悪夢「見るまえに跳べ 日本の新進作家vol.20」@東京都写真美術館

今年はそんなに溜めずにサクサク書いていきたい。 新進写真家の展覧会だが、最後のうつゆみこが凄かった。キッチュで悪夢的な写真。被写体の取り合わせが、気持ち悪くてとてもよい。 展覧会では、普段見られないような「変なもの」を観たいので、大変満足し…

2023おいしかったもの

2023年おいしかったもの ベストスイーツ 京橋千疋屋 夜パフェ「フィーユ オ フレーズ」 夜限定のお酒を使ったイチゴのパフェ。イチゴの美味しさもさることながら、アマレット、カルダモンなどの香りが重層的で、全体としての構成の面白さがあった。夜パフェ…