ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

変わることは変えること『イニシェリン島の精霊』

長年、毎日一緒にパブで長話をしてきたパードリックとコルム。しかし、コルムが突然、パードリックに話しかけてくるなという。なにか機嫌を損ねるようなことをしたのか、と謝るパードリックだが、コルムはかぎりある人生をもっと有意義なものにしたいから、…

不安は高くつく

精神科医、中井久夫の著作を最近読んでいる。とても面白い。 その中に、強迫神経症、不安症の人たちについて書かれたところがあった。 その不安は、イマジナリーなもので、現実的に解決できない。本人の想像力に依拠したものだという。だから、どこまでもふ…

しんしんとふる雪、暗闘 映画『崖上のスパイ』

日本支配下の満州国に4人のスパイが降り立った。ソ連で訓練された4人は、ウートラ作戦のためハルビンを目指す。 しかし、満州国の特務機関はその動向をつかみ、罠を張り巡らせていた。 面白かった! 美しくスタイリッシュな映像、緊密でドライな騙し合い。 …

心のままに生きよう『めぐりあう時間たち METライブビューイング2022-23』

不覚にも半分くらい寝てしまったが、ラスト、別々の時代を生きていた主人公の女性たちが集まって歌う曲がとても良かったので、満足。 1920年代イギリスで療養しながら執筆に取り組む作家ウルフ、1950年ちかくのアメリカで一見幸せな生活を送る主婦リンダ、19…

織物とクジラ「江上幹幸コレクション インドネシアの絣・イカット ~クジラと塩の織りなす布の物語~」@たばこと塩の博物館

売店で、江上さん私蔵の実際のイカットが売っている! 高いけどほしい、展示を見たあとだと、なおほしくなる。 インドネシアのある地域で作られる布、イカットはクジラ漁を起点にした海の民と山の民の交易で生み出される。 めんめんと続く男たちの命がけのク…

話し合うことの力「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」東京都現代美術館

だれかとなにかについて話すことは、それだけで作品になるくらい、強度がある。 オランダの植民地支配、映像学校での女性差別、日本の戦中期の女性作家、住宅供給など、当事者や資料を読んだ参加者たちが、真摯に相手の言葉を聞き、自分の言葉を返す。 全部…

子どもを守るのは大人だからだ『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』

窮地に陥った子どもを助けるその道のプロフェッショナル。 縁もゆかりもない子どもを助けるのは、淡い恋愛感情だったり、母性や父性があるから、と描かれてきたが、最近は大人は困っている子どもを助けるものだ、という作品が増えてきた。 大人なら(利害を越…

やさしくかしこい映画『金の国 水の国』

原作の雰囲気をよく伝える映画化。 映画を見たときに受ける印象を原作漫画に近くするためには、媒体の違いを踏まえて、取捨選択し、作らねばならないのだと思う。 それをかなりしっかりしていて、完成度の高い映画だ。 背景はじめ、描かれる世界が美しい。ア…