ときよとまれ

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人間的であろうとする男性がホモソーシャルを降りる話 映画「アパートの鍵貸します」

保険会社のサラリーマン、バディ(ジャック・レモン)は、不倫の情事用に既婚の上司たちに自分のアパートを貸している。よい評価、出世と引き換えだ。しかし、新たに部屋の貸し出し先に加わった人事部長のお相手は、バディが思いを寄せるエレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)だった。

 

ネタバレを含みます。

タイトルのとおり、今見ると、人間的であろうとする男性が、社内の女性をいっときの情事の相手としか見ず、下位の男性には無理な奉仕をさせる会社の上司たちの男社会(ホモソーシャル)を降りる話だと思った。

主人公のバディは、出世を目指して上司に取り入ろうとするが、貸し出した後の散らかった部屋をてきぱき片付け、酒やクラッカーの注文に応じ、貸し出しのリスケジュールも丁寧、料理や看病もできる、ケアのできる男性である。

そんな彼に対し、上司たちは寝ていてもたたき起こして部屋を借りようとするし、熱があるといってもキャンセルさせない。約束したんだから守れと言い張り、バディの体調など無視する。都合のよい男扱いである。

フランは既婚者である人事部長が、過去にもさまざまな女子社員と関係し、離婚をにおわせても決してしないと知り、絶望して自殺未遂する。部屋に倒れていたフランをバディは介抱し、医者を呼び、励ますが、恋人である人事部長はやって来ることなく、面倒事はバディにまかせ、それでいてフランが元気になると別れたくないという。都合のよい女扱いなのだ。

 

自分たち権力のある男には融通しあい、それ以外を搾取する上司たちに気に入られて、バディはかなりの出世をするが、最後それを捨てて、自由になる。フランを大切に思うからでもあり、えらくなったところでアパートを貸す役割の者として利用され続けるのに、NOを突きつけたのだ。

 

途中、隣人である医者が、物音からバディがいろいろな女性を連れ込んでいると誤解して(実際は上司たちの逢瀬の音)、「ちゃんとしろ、人間になれ」というが、会社の男社会(ホモソーシャル)のなかでは、人間ではいられない、そこからはずれて人間的に生きるということなんだろう。

 

コミカルでちょっと悲しくて、しかしハッピーエンドの素敵な映画だった。

 

 

 

 

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