ときよとまれ

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錦糸町でも飲めばいいのに平山さん 映画「PERFECT DAYS」

わたしは、あまり好きではなかった。

つつましく暮らす役所広司なら「すばらしき世界」の方が、わたしは好きだ。

 

 

以下、気になったところを書くので、この映画を好きな人は用心されたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本作「PERFECT DAYS」は広告映画だと思う。

なんの広告かというと、渋谷区の「ナイスデザイン」トイレ、そして清掃員として、つつましく、穏やかに暮らす「日本の人」である。

 

ユニクロの経営者、柳井さんがプロデュースしたトイレプロジェクト、その映画化と聞いて、広告映画なんだろうな~、と思い、でも評判いいし、見たら意外によいかも、と思ったが、別方向からいろいろ気になってイライラした。

映像や、役者の演技、空気感などは、とてもいい。

しかし、画面から排除されたものが、わたしには気になった。

 

主人公、トイレ清掃の仕事をしている平山はスカイツリーの程近く、亀戸七福神をまつる神社近くのアパートに住んでいる。浅草に飲みに行く。

わたしは、そのあたりに土地勘がある。下町でたしかに映画で描かれたようなところもあるが、多国籍な街でもある。中国や韓国など外国にルーツのある人も多く住むし、浅草は観光客もとにかく多い。商店街には、食材の輸入品店や、いわゆるガチ中華なども並ぶ。わたしは、昔ながらの下町風情とアジアのマーケットみたいな活気が、このあたりのおもしろさだと思っている。

 

しかし、亀戸浅草の多国籍なところはまったく撮されない。渋谷区ではトイレ清掃中に黒人女性に使い方を聞かれたりするが、亀戸、浅草では外国にルーツのある人は出てこないのだった。

また、平山さんが住んでいるアパートからは錦糸町も近いのに、なぜ錦糸町で飲まないのか。なぜ、亀戸から浅草に行くのに、吾妻橋ではなく、やや遠回りな桜橋を使っているのか。

 

錦糸町の猥雑さは、この映画の「日本らしさ」にそぐわないからか? また、川を渡るルート選定は、吾妻橋のたもとにあるアサヒビールの金のオブジェを見せたくないのかな、など、そこに実際にはあるはずなのに、なぜか見えなくされてるものの存在と、そうした意図を強く感じてしまった。

 

作中で、車や自転車を走らせる場面も、見知った場所だとカットのつながりに違和感があったりする。前のシーンと違う方向から走ってるような?

 

そんなこんなで、渋谷区のトイレも、きっと同じように、見せたくないものは入念に除いて、撮影したのだろうと思ってしまう。

田中泯演じるホームレスが登場するが、渋谷区はミヤシタパークの開発時にホームレスを排除したり、公園の夜間立ち入りを禁止したりしていたので、ああいうブルーシートハウスは、もう現実にはないのではないか。このあたりも、いびつに感じる。

 

わたしがこの土地を一度も訪れたことがなかったら、よく知らなかったら気持ちよく見られただろう。

他の知らない土地や人、出来事を描かれた映画でも、同じようなことが起きているのだろうな、知らないから気分よく見られているのだろうな、と、ちょっと怖くなった。

 

xtrend.nikkei.com

 

www.perfectdays-movie.jp

wwws.warnerbros.co.jp