ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

才能は時に厄災のようにあふれ、人生を押し流す『エルピス』第六回

やっぱ、斎藤さん(鈴木亮平)むかつくなぁ。浅川(長澤まさみ)に別れを告げるラインの後の「さあ、もうひとがんばり」みたいな顔。そして、彼は次のステップへ。 村井さん(岡部たかし)、パワハラセクハラもあるが、たよりにもなるというバランス。人には、いろ…

この物語を描くに足る美しく深い映像『グリーン・ナイト』

まるで本物の騎士伝説を見ているかのような、重厚な映像。 見えないことを畏れない、陰影が強く、闇が取り巻く視界。 どこを切り取っても、絵画のような美しさだ。 原作はアーサー王の円卓の騎士の一人、ガウェイン卿にまつわる物語「サー・ガウェインと緑の…

香りが過去と今をつなぐ『ファイブ・デビルズ』

「愛のかげり」を二人が歌ったとき、愛を確信した。 主人公の少女は、母親が大好きだ。でも母は夫とうまくいっていないためか、いつも浮かない顔。フランスの田舎の村で父が黒人、母が白人のため少女は、学校では疎外されていて、居場所がない。 少女が熱中…

全労働者必見『キャシアン・アンドー』10話 自分はたどりつけない明日のために戦えるか

いくつもの顔をもち、時に味方を犠牲にしながら抵抗活動を行うルーセンが、『鬼滅の刃』の煉獄さんみたいなことをいう。 自分ではたどりつけない未来のために、心を、自分自身を燃やすのだと。 自分が苦しみの闇の中で燃え尽きても、それを越えて進む次の人…

取り戻していく「エルピス」第五回

斉藤(鈴木亮平)とディナーを食べているときの浅川の顔、カルピスのCMでの長澤まさみのように、やや過剰なほど美味しそうにしているように見えた。 岸本(眞栄田郷敦)は、母にこれまで言えなかったことを吐き出し、ひとり真実を探り当て、食欲、性欲、睡眠欲を…

プリンセスは道を踏み外させてもらえない『ブラック・パンサー ワカンダ・フォーエバー』

シュリが世界を燃やすところが見たかったー。 いろいろネタバレします。 本作の主人公は、ワカンダの王女シュリ。冒頭、急な病で兄にしてブラック・パンサーが死に、悲しみにくれるワカンダ王国。母が女王となるが、資源を巡り先進国とは対立を深める。そん…

もはや斎藤が憎い「エルピス」第四回

鈴木亮平演じる斎藤が、嫌になるほど悪くて色気がある。 もはや憎い。 この人に抵抗するすべを身に付けないと、このまま負けてしまう。 浅川(長澤まさみ)は支配されたい欲、誰か自分より優れたものに従いたい欲、そして性欲にのまれず、頑張ってほしい。 岸…

年若い人のエネルギーの多さと急なリリカルさがよい 「わたしの星」ままごと

BS松竹東急で放送されていたのを観賞。 こういう舞台を流してくれるのはありがたい。 ある中学で文化祭の発表の練習に集まった生徒たち。夏休みが終わる直前だ。ななほは、これまでずっと一緒だった同級生のスピカに明日転校すると、告げられる。火星に行く…

マ・ドンソクの腕を振るう効果音がすごい『犯罪都市 THE ROUNDUP 』

ギュワン! みたいな、今まで聞いたことのない効果音で、マ・ドンソク演じるマ・ソクト刑事が豪腕を振るう。 主人公は班長と、ベトナムの韓国大使館へある犯罪者の引き取りに向かい、そこで凶悪な在外犯罪者の存在を知る。その男カンは、韓国人誘拐と殺害を…

ムニ「ことばにない」前編(作・演出:宮崎玲奈)言葉になってこなかったことを 消されたレズビアン当事者の声

劇評を見て、滑り込みで観賞。満席。 10分休憩を2回挟んで、3幕、4時間。 長丁場だが、退屈しなかった。 日本に生きてる人にとって、とても切実な舞台だと思う。 高校の演劇部で出会い、今も一年に一度の公演をしている女性4人。演劇を中心に活動している…

正しいことがしたいなぁ「エルピス」第三回

主人公たちと同じ事件を追う地元紙の新聞記者のキャラクターがおもしろい。ああいう人、小さめのマスコミに実在する。 そして、警察OBと、被害者遺族とのアクセスのしやすさのちがい。 被害者を守る気のなさは、この社会の特徴だ。 謎の男を瑛太が演じる。果…

なんにもなれない/ならない女『WANDA』

ひとり広大な採石場(?)を歩くワンダの後ろ姿が、この映画全体を示している。 歩いている人などいない。みんな車に乗っている。 彼女には車はなく、どこへ行くにも誰かに乗せてもらわないといけない。 寄る辺なく、自由でもない。 実家に居場所はなく、離婚…

ひとの旅を見て、自分の旅を夢見る「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」

ひとの旅を見ている場合ではない、私も旅に出たい。 そう思わせてくれる展示だった。 朝香宮夫妻が旅した道程や、見たこと聞いたことが、瑞々しく綴られた絵はがきも展示されている。その旅での出会いや刺激された感性が、あの邸宅を造ったきっかけでもある…

覚悟はないけど闘いたい 「エルピス」第二回

話の進みが速い。数年前スタートで、実際のニュース映像も使う物語で、どこまで描くのか末恐ろしいが、楽しみでもある。 死刑囚の冤罪事件から、脱落したかに思えたものの「覚悟はないけど、お手伝いなら」と戻ってきた岸本がリアルに感じた。 自分が矢面に…

創造したものを殺しなさい NTL2014『フランケンシュタイン【クリーチャーver.】

ベネディクト・カンバーバッチが、フランケンシュタイン博士が創り出した怪物を演じる、ダニー・ボイル演出の舞台。フランケンシュタイン博士(ジョニー・リー・ミラー)と怪物が逆になるバージョンも同時に上演された。 舞台を映像にしたものだが、映画監督が…