シュリが世界を燃やすところが見たかったー。
いろいろネタバレします。
本作の主人公は、ワカンダの王女シュリ。冒頭、急な病で兄にしてブラック・パンサーが死に、悲しみにくれるワカンダ王国。母が女王となるが、資源を巡り先進国とは対立を深める。そんな中、その貴重な資源、ヴィブラニウムの探知機を作った研究者をめぐり、誰も知らない海底の王国タロカンの指導者がワカンダを訪れる。
いちばんアガッたのは、封鎖された橋を突破するカーチェイスシーン。
全体としては窮屈な話だと感じた。ヒーローが活躍する物語だが、現実の重力がかなり働いていて、ヒーロー的倫理と一国の指導者、プリンセスとしての責任を両方満たす道は、細く険しい。
先進国のせいで、小さな国に緊張が高まり、紛争が起きてしまう。アメリカに対してできることは、自由を奪われそうになる個人を保護することくらいだ。スーパーヒーローがいても、国際政治からは逃れられない。
言葉の問題も気になった。作中、英語、ワカンダ語、タロカン語を出てくるが、タイトルにして、決め台詞が英語でよかったのだろうか? 現地語がフレーバー的に使われているのは、ちょっと欺瞞を感じる。少なくともシュリはあの瞬間、ワカンダ語で叫んでよかったのではなかろうか。
また、家族を次々失っても、それに報復すること、復讐のために「世界を燃やすこと」を選ばせてはもらえない。
『スパイダーマン ノーウェーホーム』でも思ったが、若い人にけして過ちをしないこと、彼女ら彼らから大切なものを奪っていく世界を許すことを強要してるように感じる。
「アベンジャーズ」ではおじさんたちがかなり道を間違えていたのになあ。若い人こそ、間違ってそこからさ迷い、立ち直るところを描いてほしいように思う。
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』的世界なら、命乞いをさせたあと、首をはねていただろう。
プリンセスの過ちを胃が痛くなるくらい描いてくれるので、わたしはこういう物語の方が、先が気になる。