ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

2022-01-01から1年間の記事一覧

2022 年間ベスト 演劇の部(配信、映画版などふくむ)

今年見て良かった舞台。あんまり見てないので、少なめ。 『歌劇 ブエノスアイレスのマリア』@座・高円寺 配信 ピアソラのオペラ。ものすごくかっこよかった。朗読の男性が朗々としていい声だったが、本業は研究者らしい。すごい。 『だからビリーは東京で』@…

2022 年間ベスト 展覧会の部

今年見てよかった展覧会。 ホー・ツーニェン 百鬼夜行 @豊田市美術館 見たときは、ふーんという感じだったが、あとからじわじわ気になってきた。同時開催の❰旅館アポリア❱@喜楽亭が時間がなくて駆け足だったのが心残り。 奇想のモード@東京都庭園美術館 「身…

2022 年間ベスト 食べ物の部

今年食べておいしかったもの。 ベストケーキ ❰金沢 ル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWA❱ 奇をてらわず、しかしフレッシュな驚きのある味の組み合わせ。 金沢では、ぜひ食べるべきケーキ。 le-musee-de-h.jp ベスト青菜炒め ❰名古屋 味仙❱ 今年初めて食べたが…

2022 年間ベスト 映画・ドラマの部

今年見てよかった映画とドラマ。 映画 『ハウス・オブ・グッチ』 レディ・ガガが演じる主人公が、野心家でエネルギッシュでよかった。 『ザ・バットマン』 今までとは違うテイスト。若くて対人関係が苦手そうなバットマン。 『セリーヌとジュリーは船でゆく…

自分の人生を取り戻す闘い 映画『あのこと』

作中、不調の原因を教師に尋ねられて、主人公アンヌは答える。 「女しかかからず、主婦になる病気だったんです」 中絶が違法だった1960年代フランス。大学生アンヌは予期せぬ妊娠をしてしまう。将来のため中絶を望むアンヌに、医師は、あきらめて受け入れろ…

てっきり食◯映画だと思ったのに、接客業の恨み映画だった『ザ・メニュー』

予約至難の孤島のレストランにやってきたお金持ちのゲストたち。 シェフ(レイフ・ファインズ)とスタッフの様子は奇妙だが、傲慢なゲストは、自分達はもてなされるはずと思いこんでいるので、異常に気づかない。 ただひとり、本来なら今夜のディナーにふさわ…

他の誰かを信じられることを希望という『エルピス』最終回

長澤まさみ、素晴らしかった! 見てない人は、みんな見たほうがよい。 今年一番、迫力のあるドラマだった。 一度はお蔵入りになりそうだったドラマが、こうやってしっかり作り込まれて世に出たということ、それ自体が本作の内容とリンクしている。 信じられ…

なんか元気出た『岡本太郎展』@東京都美術館

太陽の塔、芸術は爆発だ、最近ではTAROMANでもおなじみ、岡本太郎の展覧会にいった。 入ってすぐ、立体や大型の絵画がバンバン置いてあり、そのなかを来場者がうろうろする空間があり、よかった。 あんまり最初から、系統立てて解説するよりは、そのまま見た…

起きてるほとんどの時間を共に過ごす人、それは同僚『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

おもしろタイムループ映画にして、お仕事映画でもある。 出社して働いている人にとって、平日起きてる時間のほとんどを一緒に過ごすのは会社の同僚だったりするだろう。そんな人たちに目を向ける物語だ。 仕事が集中し、社員が泊まり込んでいる中小広告会社…

まだまだかわいい「マリー・クワント展」@bunkamura ザ・ミュージアム

60年代に一世を風靡し、ロンドンから世界へブランド展開したマリー・クワント。 時系列に沿って、自分で服をつくっていた時代から、さまざまなメーカーとコラボし、ライセンスビジネスで大成功をおさめるまでをたどる。 展示された当時のデザインの、ミニワ…

テレビの妖精のような村井さん『エルピス』第九回

軽薄で、セクハラパワハラもひどくて、強欲で、バブルの申し子で、神出鬼没で、社会を動かす一発を狙う。村井さん(岡部たかし)はテレビの妖精さんのようだ。 番組の顔となり、周囲の抑圧に次第に体調を崩す浅川(長澤まさみ)。会社を首になった岸本(眞栄田郷…

男たちへの恐怖が呆れへと至る新感覚ホラー『MEN 同じ顔の男たち』

男性の方が、エッジのきいた嫌悪感や恐怖を感じられるかも。 本作が入念に描くミソジニー(女性嫌悪)的振る舞いを重ねる男性たちは、女性には、ある程度見慣れた風景であり、現実に存在している。 作中に出てくる、タンポポの綿毛のように。綿毛の描写、ホン…

行きつ戻りつ 「できることをする」の欺瞞『エルピス』第八回

真相に迫っているのに、それを出せないしがらみのきつさ。 岸本(眞栄田郷敦)がどれだけ覚悟を決めても、まわりの都合で押し流されてしまう。 浅川(長澤まさみ)のぶれぶれの感じも、イライラするけど等身大だ。 左遷されなかった者と、された者の差。 知らぬ…

犯した罪を隠して腐っていく者たち『エルピス』第七回

村井さん(岡部たかし)のチャームが際立つ回だった。 セクハラかつ一言多い人だが、浅川(長澤まさみ)や岸本(眞栄田郷敦)に、正気を取り戻させてくれる人だ。たぶん気休めを言わず、相手に迎合せず、そのときそのとき正直に話すので、それに対して呆れたり、ム…

だれかと少しずつ人生を共有して生きている『ある男』

物語と映像が、見事に織合わさっている。 今年ベストかも。 監督は石川慶。 他人の人生を騙り死んだ男(窪田正孝)の過去、その家族、それを探る男(妻夫木聡)の今、というウェットになりそうな題材をドライに、でも冷たくならず撮っている。 稀有な作品だと思…

シンクホールこわい『奈落のマイホーム』

前半はホームコメディ、後半はサバイバルになる。 日本で公開される韓国エンタメは、粒ぞろいだなあ、と改めて感じるストーリーと安っぽさのない映像。 苦節11年、頭金を貯めローンを組んでソウルにマンションを買った主人公一家。隣人とちょっとトラブルに…

才能は時に厄災のようにあふれ、人生を押し流す『エルピス』第六回

やっぱ、斎藤さん(鈴木亮平)むかつくなぁ。浅川(長澤まさみ)に別れを告げるラインの後の「さあ、もうひとがんばり」みたいな顔。そして、彼は次のステップへ。 村井さん(岡部たかし)、パワハラセクハラもあるが、たよりにもなるというバランス。人には、いろ…

この物語を描くに足る美しく深い映像『グリーン・ナイト』

まるで本物の騎士伝説を見ているかのような、重厚な映像。 見えないことを畏れない、陰影が強く、闇が取り巻く視界。 どこを切り取っても、絵画のような美しさだ。 原作はアーサー王の円卓の騎士の一人、ガウェイン卿にまつわる物語「サー・ガウェインと緑の…

香りが過去と今をつなぐ『ファイブ・デビルズ』

「愛のかげり」を二人が歌ったとき、愛を確信した。 主人公の少女は、母親が大好きだ。でも母は夫とうまくいっていないためか、いつも浮かない顔。フランスの田舎の村で父が黒人、母が白人のため少女は、学校では疎外されていて、居場所がない。 少女が熱中…

全労働者必見『キャシアン・アンドー』10話 自分はたどりつけない明日のために戦えるか

いくつもの顔をもち、時に味方を犠牲にしながら抵抗活動を行うルーセンが、『鬼滅の刃』の煉獄さんみたいなことをいう。 自分ではたどりつけない未来のために、心を、自分自身を燃やすのだと。 自分が苦しみの闇の中で燃え尽きても、それを越えて進む次の人…

取り戻していく「エルピス」第五回

斉藤(鈴木亮平)とディナーを食べているときの浅川の顔、カルピスのCMでの長澤まさみのように、やや過剰なほど美味しそうにしているように見えた。 岸本(眞栄田郷敦)は、母にこれまで言えなかったことを吐き出し、ひとり真実を探り当て、食欲、性欲、睡眠欲を…

プリンセスは道を踏み外させてもらえない『ブラック・パンサー ワカンダ・フォーエバー』

シュリが世界を燃やすところが見たかったー。 いろいろネタバレします。 本作の主人公は、ワカンダの王女シュリ。冒頭、急な病で兄にしてブラック・パンサーが死に、悲しみにくれるワカンダ王国。母が女王となるが、資源を巡り先進国とは対立を深める。そん…

もはや斎藤が憎い「エルピス」第四回

鈴木亮平演じる斎藤が、嫌になるほど悪くて色気がある。 もはや憎い。 この人に抵抗するすべを身に付けないと、このまま負けてしまう。 浅川(長澤まさみ)は支配されたい欲、誰か自分より優れたものに従いたい欲、そして性欲にのまれず、頑張ってほしい。 岸…

年若い人のエネルギーの多さと急なリリカルさがよい 「わたしの星」ままごと

BS松竹東急で放送されていたのを観賞。 こういう舞台を流してくれるのはありがたい。 ある中学で文化祭の発表の練習に集まった生徒たち。夏休みが終わる直前だ。ななほは、これまでずっと一緒だった同級生のスピカに明日転校すると、告げられる。火星に行く…

マ・ドンソクの腕を振るう効果音がすごい『犯罪都市 THE ROUNDUP 』

ギュワン! みたいな、今まで聞いたことのない効果音で、マ・ドンソク演じるマ・ソクト刑事が豪腕を振るう。 主人公は班長と、ベトナムの韓国大使館へある犯罪者の引き取りに向かい、そこで凶悪な在外犯罪者の存在を知る。その男カンは、韓国人誘拐と殺害を…

ムニ「ことばにない」前編(作・演出:宮崎玲奈)言葉になってこなかったことを 消されたレズビアン当事者の声

劇評を見て、滑り込みで観賞。満席。 10分休憩を2回挟んで、3幕、4時間。 長丁場だが、退屈しなかった。 日本に生きてる人にとって、とても切実な舞台だと思う。 高校の演劇部で出会い、今も一年に一度の公演をしている女性4人。演劇を中心に活動している…

正しいことがしたいなぁ「エルピス」第三回

主人公たちと同じ事件を追う地元紙の新聞記者のキャラクターがおもしろい。ああいう人、小さめのマスコミに実在する。 そして、警察OBと、被害者遺族とのアクセスのしやすさのちがい。 被害者を守る気のなさは、この社会の特徴だ。 謎の男を瑛太が演じる。果…

なんにもなれない/ならない女『WANDA』

ひとり広大な採石場(?)を歩くワンダの後ろ姿が、この映画全体を示している。 歩いている人などいない。みんな車に乗っている。 彼女には車はなく、どこへ行くにも誰かに乗せてもらわないといけない。 寄る辺なく、自由でもない。 実家に居場所はなく、離婚…

ひとの旅を見て、自分の旅を夢見る「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」

ひとの旅を見ている場合ではない、私も旅に出たい。 そう思わせてくれる展示だった。 朝香宮夫妻が旅した道程や、見たこと聞いたことが、瑞々しく綴られた絵はがきも展示されている。その旅での出会いや刺激された感性が、あの邸宅を造ったきっかけでもある…

覚悟はないけど闘いたい 「エルピス」第二回

話の進みが速い。数年前スタートで、実際のニュース映像も使う物語で、どこまで描くのか末恐ろしいが、楽しみでもある。 死刑囚の冤罪事件から、脱落したかに思えたものの「覚悟はないけど、お手伝いなら」と戻ってきた岸本がリアルに感じた。 自分が矢面に…