作中、不調の原因を教師に尋ねられて、主人公アンヌは答える。
「女しかかからず、主婦になる病気だったんです」
中絶が違法だった1960年代フランス。大学生アンヌは予期せぬ妊娠をしてしまう。将来のため中絶を望むアンヌに、医師は、あきらめて受け入れろというだけだ。
彼女は、ただひとり、中絶の手段を求めて行動しはじめる。
見ていて、とても痛い映画だ。
仲が良かった女友達に、妊娠と中絶を望んでいることを打ち明けても、見放されてしまう。当時、中絶は罪、刑務所行きなのだ。女好きの男友達に言い寄られたり(妊娠していれば『安全』だから!)もする。
自分で金串を差し込んだり、無麻酔で闇堕胎の施術を受けたり、超絶痛そう。周囲にバレないよう、叫ぶことすら許されない。
しかしとても勇敢に、主人公は彼女の体を社会から取り戻そうとする。
アメリカの一部や他の国でも、中絶は女性の権利として認められなかったりする。
望まぬ妊娠が女性にとって、どんなに辛いことか、中絶が認められないことが、彼女から何を奪うのかを、克明に描いた映画である。