ときよとまれ

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絢爛豪華な映画「哀れなるものたち」

身投げした女性の体に、胎児の脳を移植し、よみがえさせられたベラ。彼女は、その手術をした天才外科医のもとで養育されるが、世界を体験するために、遊び人の法律家と旅にでる。

 

どこを見ても美しい密度のある映像。ベラの纏う服や、部屋の内装、現実とはどこか違う旅する街街。

 

物語は「常識=偏見」の歪さを、拡大して映し出す。生きてることは、哀れなことだとすると、死からよみがえらされたベラは、哀れなるものであり、また彼女の出会った人びとも哀れである。作中息を引き取った人だけが、解放される。

 

先日読んだ木村敏『異常の構造』に「常識とは生きたいという意思によってできている」というようなことが書いてあったが、一度死んだベラ、生きはじめて間もないベラは、死に近く常識を知らず「異常」な存在であり、やがて言葉を知り、人と話し、さまざまな体験をして生きることになじんだら、その異常さは鳴りを潜めていく。

これは女性の解放の物語というより、異常な存在が社会化されて馴らされていく物語だと思う。

この世は異常な存在が異常なままでいられない、馴化の力が強く働く世界なので、見る人もその方が安心する。

 

原作も読んでみよう。

 

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