ときよとまれ

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男二人の道行きは心中『仕掛人・藤枝梅安2』

昔、映画論の授業かなにかで、任侠映画のラスト、主人公と助太刀の男が雪降りしきるなか二人行くシーンの解説で、これは浄瑠璃の心中物を原典にしていて、一歩一歩感情が高まり、最後に死(心中、斬り合い)に至る、と聞いた。

その事を久しぶりに思い出した。

 

梅安(豊川悦司)と彦次郎(片岡愛之助)、梅安を敵と狙う井上半十郎(佐藤浩市)と佐々木八蔵(一ノ瀬颯)仕掛人二組のそれぞれの情感がかけあわされ、殺陣としてみると、あっけない幕切れのようでいて、感情は激烈に盛り上がり、落とし前はきっちりつけて、満足感がある。

半十郎ら腕のたつ剣客の仕掛人に対し、主人公たちは針と吹き矢という暗器をもちいる暗殺者なので、正面から迎え討たずに闘う。その一貫性もよかった。

 

椎名桔平の憎々しい悪役も見事だったが、本作の凄みは佐藤浩市がもっていった。

暖簾越しに梅安を見る半十郎の目。

 

それにしても、梅安を慕う人が多い。おもん(菅野美穂)のセリフに「あの方を慕うことで自分が救われているのだ」とあったが、彦次郎も梅安の周囲の人も、それぞれそういうところがあるのかも知れない。

梅安は基本的に想いを向けられる側で、思慕にしろ怨恨にしろ、想いを寄せる者たちは梅安が受け止めてくれることで、癒されたり解放されたりする。

仕掛人であり、鍼医者でもある主人公と連関した物語。

 

 

 

 

 

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