三年付き合った恋人からプロポーズされた翌日、市子は失踪した。恋人は、警察に届けを出すが、川辺市子という人間は存在しないといわれてしまう。
市子を、杉咲花が演じる。
とにかく、すべての役者の演技がよい。
主演はもとより、恋人役の若葉竜也、母親役の中村ゆり、同級生の北くん役の森永悠希もみんなすごくよい。
ストーリーはやや気になるところもあるが、人間と彼女らが生きている時をくっきりと映した、よい映画だった。
パートナーが誰だかわからなくなる物語は『ある男』や『嘘を愛する女』など、いろいろあるが、人間誰しももつ不安がベースにありそうだ。
今となりにいる人が、どんな人かわかっているか。
完全に知ることはできないものを、そのまま愛することへの不安と挑戦が物語に詰まっている。
ラストは『ぼくのエリ』を思い出した。
「悪魔」と呼ばれたって、そのまま愛したり愛されたりしていいのだ。