トラン・アン・ユン監督のデビュー作とは思えぬ完成度の映画。
しっとりしたベトナムの空気を感じる。
1950年代のサイゴン、働き始めた少女ムイの目から奉公先の人間模様、そして成長したムイの恋を描く。
飾り窓や柵、扉越しに撮される重層的な風景、それは人間模様とも呼応した、なんともゆたかな映画体験をさせてくれる。
優しい奥さまと時折蒸発しては戻るだんな様、いたずら好きの末っ子(にくらしかわいい)と母の立場に心を痛める次男、亡くなった夫と孫娘のために毎日祈る大奥さまと彼女を気にかける老紳士。それぞれの人生が重なって映画の世界ができている。
料理の描写もとても美味しそう。青いパパイヤの調理法、ああやるのかと、はじめて知った。