ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

青地が中砂を好きなだけ『ツィゴイネルワイゼン』

士官学校教授の青地(藤田敏八)は旅先の浜で殺人の疑いをかけられる友人・中砂(原田芳雄)を助ける。中砂と青地は鰻を食べながら、弟の葬儀から帰ったばかりの芸者小稲(大谷直子)に話を聞く。服毒自殺した弟の骨は、焼いたあと次第に桜色に色づいていったという。

青地は、妻周子(大楠道代)と妻の妹の見舞いにいくが、妹は青地に不思議なことをいう。やがて中砂は妻・園を娶るが、小稲に瓜二つだった(大谷の二役)。

内田百閒の「サラサーテの盤」ほか短編を組み合わせた幻想譚。

美しく面白かった。食べるシーンがたくさんあって、セクシーだ。

こんにゃくをちぎってみたい。

 

原田芳雄が演じる中砂の色気がすごいというが、これは青地が感じているものだろう。青地が中砂を好きなのだ。

 

よく見ると作中の女たちは、あまり中砂をよく思っていない。青地の方がモテている。

小稲は青地に寄り添い、腕を組んでくるし、中砂に絡まれたり、触られたりしたときも、嫌そうで青地に助けを求めるような目を向けている。青地が助け船を出してやらないから、しかたなく中砂の相手をしていると思った。

青地は周子と中砂の仲を疑うが、周子本人は中砂を「いい男だけど、変な人よ。こわい」と評す。周子と中砂が一緒に見舞いに来て親密そうにしていたといい、青地に疑心を芽生えさせた妻の妹は、青地のために戸棚にたらの子を用意したから、きっと食べてね、という。義兄にわりと好意がある風だ。中砂の妻の園も、夫が留守のときに訪ねてきた青地を寂しさから引き留めようとする。

こんなふうに青地のほうが、女に人気がありそうだが、青地はなぜか女たちが中砂に惹き付けられている、と思う。

 

それは青地自身の気持ちで、作中でだれより中砂に魅了されているのは青地であろう。中砂はそんな気持ちを翻弄するように、先に死んだら骨をやる、おまえが先なら骨をもらうからな、と無理矢理約束してくる。

 

かなり変な映画だが、男と男の惹かれ合いを、幻想的に描いて美しかった。

 

 

 

 

 

 

www.eurospace.co.jp