ときよとまれ

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世間が礫となってあなたにふりそそぐなら ムニ「ことばにない」後編

前編を見て、一年後の後編。

 

亡き恩師の残した文章を元に、舞台公演をしようとする4人の女性。恩師はレズビアンで、その事を快く思わない姪の議員が妨害しようとしてくる。レズビアンへの差別、結婚相手への違和感、親の介護など、問題が降りかかるなかで、主人公たちは、既存の言葉ではなかった物語をつむぎだそうとする。

 

前編で呪いを描き、後編で呪いを解くことをめざしたという。

ややとっちらかった印象だったが、最後の物語選考委員の下りで、客の見慣れた筋立て、定型に抗う物語だから、こういう感じなのかと思い、痛快だった。前編より、尖っている。

 

「消費と労働」「取り乱せ」「欲望を殺すな」という言葉が印象に残る。これまで抑圧されてきた声、当事者の声に触れたとき、今までの現実が揺らぎ、それが嫌だと思う人々は、嘘だといい、声を圧殺し、なかったことにしようとする。

社会に適合することが、幸せへの道であると世の人は皆いうが、全員できるわけでもない。

 

とりあえず、会いたい人に会い、話し、ごはんを食べて、今日を生きる。

世間の有り様すべてが、礫となってふりそそぐなかで、それを続けること、それ自体が戦いであり、抵抗であるのだろう。

 

 

追記

前編の自分の感想を読み返して、はっとするところがあった。

後編で、「あなたがあの子になんかしたんじゃないですか?」とある人物がいわれて、「なんでそう思うんですか? それは偏見じゃないんですか?」といいかえす。

前編の感想のときの私に、いわれたようだ。見てすぐは気付かなかったけれど、しばらくして、その場面をふと思いだし、ああ偏見だったな、と思った。

すぐにはわからなくても、あとからひびいてくるものがある。いい演劇だと思った。

 

 

 

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