長く刑務所にいた男(オスカー・アイザック)は、刑務所で覚えたカウンティングで、カジノを渡り歩き、少なく賭けて少なく勝つポーカープレイヤーとして暮らしていた。カウンティングは、配られたカード、オープンになったカードから、これから出るカードの確率を計算し、勝率をあげるやり方だ。男はそれを、過去のカードが未来を変える、と表現する。ラ・リンダ(ティファニー・ハディッシュ)からスポンサーから出資を受けてポーカーをしないか、と誘いを受けるが、男は目立ちたくない、と一度は断る。
そんなある日、男はカジノつきホテルの会場でセキュリティ開発者(ウィレム・デフォー)の発表を聞き、青年(タイ・シェリダン)に出会う。開発者は、かつてイラクのアブグレイブ刑務所で拷問技術を供与し主導した少佐だったが、咎めを受けなかった。一方、青年の父、そして主人公はそこに赴任し、部下として虐待に関わり、罪に問われた。
父に殴られながら育った青年は、少佐を殺す計画に男を誘うが、男は断る。そして、青年が借金を返して大学にもどれるよう、ラ・リンダのオファーを受けて、大金を賭けてポーカーの大会に出場する。
過去ある中年が、若者のために身を削るという、人情物のシンプルな筋立てだが、全体的にとてもスタイリッシュで、オスカー・アイザックが、なんだかねっとり撮られている。
青年には報復をやめるようにいい、禁欲的に贖罪の日々を送っているように見えて、定住せず生活手段が四六時中のギャンブルという主人公は自分が収容された刑務所、あるいはアブグレイブ刑務所から社会に帰還できていないようだ。
とはいえ、ギャンブルをめぐる日々は彼を変えるきっかけを潜ませている。
過去に配られたカードが未来に影響するとしても、絶対ではない。
配られたカードで、どんな役をつくっていくかは、プレイヤー次第なのた。