ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

行き詰まってるけど、みんな生きている『ガラスの動物園』(新国立劇場 海外招聘公演)

イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出、イザベル・ユペール出演の『ガラスの動物園』を見た。

とてもよかったので、ブログを始めることにする。

 

ガラスの動物園』は以前にも見たことがあり(ローラ役は深津絵里だったと思う)、繊細できれいだけど、センチメンタルすぎるというか過去と姉を美化しすぎなのでは、という感想で、今回もイザベル・ユペールは見たいけど、この話かあ、どうしようかなあ、と思っていた。

 

しかし、生でユペールを拝めるチャンスはなかなかないぞ、と思い切り、見に行くことにした。とてもよかった。

劇中、雨は降るけれど(美術と照明が美しい)、どこかカラッとしていて、トムが家を出たあとも、アマンダもローラもあの頃とは変化して元気にしてるかも、と思わせるエネルギーを感じた。

 

ローラは幻のように繊細で美しい姉、というよりは、当時の社会には不適合だけど自分で心地よく暮らそうとしてる(動物っぽいと感想をつぶやいてる人もいたけど、確かに!)、ユペール演じる母アマンダは南部の暮らしを懐かしみつつ、けっこう社会の変化もわかっているリアリストで、やり方に問題はあるけれど、当人は子どもたちをましな暮らしに押し上げようと必死、という感じだった。

夕食に招かれるジムも前見たときは、いきなり自己啓発みたいなこと言ってくる奴だと思ったが、今回はローラのためになりそうなアドバイスに聞こえて、いい人そうだった。演出の妙ですね。

 

一家の稼ぎ手、母親と姉を守る「男性としてのつとめ」の重圧に耐えきれず家を出た弟トムが語り手の話で、自分がいなくなったら母と姉は破滅するだろうと本人は思ってる。

でも今回の演出だと、女性たちに生命力があって、それなりにどうにかしている可能性を感じさせてくれた。

 

フランス語上演で日英の字幕つき。

目が忙しいけれど、しっかり楽しめました。

 

www.nntt.jac.go.jp