ときよとまれ

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死んだ人間に値段をつける『WORTH 命の値段』

9.11のテロで亡くなった人々の遺族のための補償金プログラム。その特別代理人になった弁護士と同僚たちが、前代未聞の難題に挑む。

 

テロ攻撃されたワールドセンタービル、ペンタゴン、そして墜落した飛行機では多くの人が命を落とした。その遺族にいくら支払うのかを決め、説明し、話を聞く映画である。大手金融機関の役員とビルの清掃員、救助のために命を落とした消防士たち、その命の値段をいくらとするのか。

主人公たちプログラムをつくる弁護士サイドと、消防士だった夫を亡くしやがて夫の秘密を知ることになる妻、妻を失い補償金計算式に反対する男性、同性愛のカップルで、パートナー制度がないために自分を認めない亡き恋人の親に排斥される男性のエピソードを絡めて描く。

 

主人公は補償金を「大事な人を失った人たちが前に進むためのものだ」というが、そう割りきれないのが感情だ。テロから数日で、補償金説明会をする。稼ぎ手を失った家族には必要なものだが、訴訟を抑えるための政府からの要請も大きい。

アメリカ経済全体のために、酷薄な判断もするのが政府という目線もある。

 

演じるマイケル・キートンが、悪い人ではなさそうだが無神経そうな感じで、よかった。対して遺族代表になっていくスタンリー・プッチもリベラルで、信念を持った人物を好演している。

 

地味ながら、重みのある作品。

 

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