ときよとまれ

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一枚に濃厚な物語がある「幕末土佐の天才絵師 絵金」@あべのハルカス美術館

もう終わってしまったが、前期と後期を鑑賞した。

今のところベストかもしれない。

 

 

幕末から明治初期に土佐で芝居絵屏風を数多く残した絵師、金蔵。

人呼んで絵金。

元々は藩の家老おかかえ絵師だったが、贋作騒動に関わり、町絵師に。以来、絵の師匠をしたり、芝居絵を描く。武市半平太にも絵を教えたとか。

 

展示は絵屏風と灯籠絵がメイン。他の絵師と共作の絵もある。

地元土佐では、毎年夏に絵金の絵屏風を持つ家が、それぞれ家の前に絵をだし、人びとがろうそくの明かりで鑑賞する絵金祭りが開催されるそうで、その風景を再現したやぐらや照明など、展示も工夫されて面白かった。

 

歌舞伎の演目を取り上げたものがほとんどで、その場面の、動き、感情、世界を一枚の絵に、ぎゅうっと圧縮したような物語性の高い絵で、楽しい。

悪役の老婆の着物が骸骨柄だったり、意地悪したあと舌を出してニヤッとしたり表情も自由で、見ていて飽きない。

お気に入りは宮本武蔵が、閉じ込められた風呂場から壁をぶち破っておどりでて、蒸し殺そうとした道場の門弟たちを叩き斬っていく絵。芝居ではたぶんこんなことにはなるまいというほどの暴力が画面に描かれていて、絵の表現力に驚いた。

 

解説として、描かれた歌舞伎の物語にも触れられているが、報告、連絡、相談が足りてないが故の悲劇が多い。あと面子や誇り、忠義が悲劇を招きがち。ちゃんと話しておけば、こんなことにはならないのに!と思うが、MCUなどヒーロー映画でも誤解やこだわりのせいで大変なことなるので、スムーズにいかないことがドラマをつくるのだ、と思った。

 

 

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