ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

映画「 ◯月◯日、区長になる女。」

杉並区にくらす劇作家、監督が、長く住んだマンションが道路予定地であると知り、区議会に興味を持つ。そして、道路計画を見直す区長を求める市民団体が擁立した候補者、岸本聡子と出会い、その選挙戦に並走することになっていく。

 

日常生活は、すなわち政治であるとよくわかる映画。岸本さんの理想の政策選挙と市民団体のこれまでの経験とのぶつかりあい、ポスターをめぐる話し合いのすすまなさも見せ、民主主義の面倒くささと、それでもやりつづける人たちの、守りたい生活の豊かさも映し出す。

 

上映のあと、館内は自然と拍手が沸いていた。

 

 

 

 

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技巧を凝らして描く人の性「春の画」

浮世絵は印刷され公に流通するが、春画は贅を凝らした贅沢品。

その美しさ、人の性、生命力を描くのが春画で、これ程多彩だったのかと、驚く。

 

春画を語る人が、なんだかちょっとわくわくしてる感じなのもよかった。

 

 

 

www.culture-pub.jp

よくわからない、そこがいい「白井美穂 森の空き地」@府中市美術館

好きそうな雰囲気だったので、見に行ったが、

正直、ぜんぜんピンとこなかった。

でも、それでよいのだと思う。

 

現代の人間の世界は、わかりやすいものがたくさん流通していて、わからないもの、わかりにくいものは黙殺されている。

わからないものが、世界のほとんどだろうに。

白井美穂の作品は、わたしとは違う角度をもっていて、わかりそうでわからず、そこがたいせつなんだろうなあ、と思った。

 

 

 

 

www.city.fuchu.tokyo.jp

見せ方がうまい 音楽劇「エル ガレオン」

人気実力派声優が、幽霊船で現れる伝説の海賊たち(黒ひげ:大塚明夫、キッド:中村悠一、ダンピア:梅原裕一郎、フローチェ:高垣彩陽)と、不老不死の研究のためにそれを捕らえようとするイギリス王太子(蒼井翔太)、迎え撃つイギリス海軍(ネンソン提督:諏訪部順⼀、カスバート:⿃海浩輔)を演じる音楽朗読劇。

 

動きの演技はないが、さすがの皆さん技量で朗読だけでかなりドラマティック。また、火や水を使ったり、照明で船や波を、スモークで砲撃を表現するなど、見せ方が華やかでよかった。

 

 

readinghigh.com

「豊嶋康子 発生法ー天地左右の裏表」「MOTアニュアル2023」@東京都現代美術館

「豊嶋康子 発生法ー天地左右の裏表」

一人の人がこの社会のなかで生きている、そのこと自体が社会に痕跡を残し、世界を変容させ、新たなものを生成する。

言われてみれば、それはそう、という感じなのだが、作品「書体」を見てちょっと感動した。

豊嶋さん宛の手書きの郵便物の宛名部分を切り取って並べたものなのだが、こんなにもいろんな人が豊嶋さんの名を書いて、手紙を送っているということ、それ自体がすごいことなのかも、と一見してわかるかたちになっている。

 

MOTアニュアル2023」

後藤映則の作品がよかった。最初は「これはどうやっているのだろう?」「どう作るのかな?」などと考えていたが、だんだん目だけになって、見る楽しさに集中していく。

 

 

www.mot-art-museum.jp

美しくゆたかな映画「青いパパイヤの香り」

トラン・アン・ユン監督のデビュー作とは思えぬ完成度の映画。

しっとりしたベトナムの空気を感じる。

 

1950年代のサイゴン、働き始めた少女ムイの目から奉公先の人間模様、そして成長したムイの恋を描く。

 

飾り窓や柵、扉越しに撮される重層的な風景、それは人間模様とも呼応した、なんともゆたかな映画体験をさせてくれる。

優しい奥さまと時折蒸発しては戻るだんな様、いたずら好きの末っ子(にくらしかわいい)と母の立場に心を痛める次男、亡くなった夫と孫娘のために毎日祈る大奥さまと彼女を気にかける老紳士。それぞれの人生が重なって映画の世界ができている。

 

料理の描写もとても美味しそう。青いパパイヤの調理法、ああやるのかと、はじめて知った。

 

 

 

 

https://www.amazon.co.jp/%E9%9D%92%E3%81%84%E3%83%91%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%81%AE%E9%A6%99%E3%82%8A-%E5%AD%97%E5%B9%95%E7%89%88-%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%BC/dp/B00JX5DREE

音が怖いので映画館推奨「トーク・トゥ・ミー」

母をオーバードーズで亡くしたミアは、気晴らしに友だちとパーティーに出かけ、そこで話題の降霊ゲームをやってみる。キャンドルに火をつけ、不気味な手の置物を握って「トーク・トゥ・ミー」と唱える。すると霊が現れ、それを自分に招き入れるのだ。ただし制限時間は90秒。

スリルを味わうミアたちだったが、母らしき霊が現れ、ミアは制限時間を越えて友だちの弟に憑依させ続けてしまう。それは、惨劇の始まりだった。

 

とにかく音が怖いので、音響のよい環境がおすすめ。

よくまとまっていて、切れ味鋭いホラー。若者たちの怖いものみたさ、思慮の浅さ、ノリのよさ、そして無責任な優しさがどんどん悪い方向に状況を運んでいく。

荒唐無稽でも、こういうことあるかもと思うリアリティーは、なにかが起きたときの人間の反応から醸し出される。ラストも好きだった。

 

 

 

 

 

gaga.ne.jp