ときよとまれ

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ヒロインも人間なので『人間ぎらい~メランコリックな恋人 喜劇5幕~』

フランスの古典演劇「人間ぎらい」、初めて観たが面白かった。

 

主人公アルセストは虚飾をきらい、とにかく正直に思ったままを口に出すことをいとわない。そのため社交界の人間関係に馴染むことができず、友人フィラントの常識的な人付き合いのしかたを批判し、絶交しようとするほど。アルセストは若き未亡人セリメーヌに恋をしている。セリメーヌは、思わせぶりな会話術で男性の心をつかむのがうまく、アルセストには恋のライバルが沢山いる。彼は、セリメーヌにも正直さを求めようとするけれど?

 

アルセストと、セメリーヌが正反対の性格で、アルセストは自分の内面をそのまま口にして相手のことを思いやらず、ありのままの自分を受け入れてほしいと望み、セメリーヌは相手にあわせていうことをどんどん変化させ、相手に好かれることに満足している。

人を辛辣に見て批評するのは、二人ともおなじなので、似た者同士ではあるのだが、自分のありのままを受け入れない人間たちがきらいなアルセストと、やりとりして人を自分に恋させるのがおもしろくてたまらないセメリーヌでは、うまくいかないのであった。

 

脇筋でアルセストに最初は恋していたエリアントが、彼女にひそかに思いを寄せるフィラントと語らい、だんだん心引かれていくところ、自然でよかった。エリアントのような賢明なひとは、フィラントを選ぶよね、という納得感。

また、八方美人なセメリーヌがとても魅力的で、いやな感じに見えないのもいいところだと思う。自分の力(美、ウィット、若さなど)を自覚して行使するのを楽しんでいて、惑わされる男たちのほうが愚かに見える。エリアントと仲良しで、二人だけの手遊びというかサインを送りあうのも、かわいくてよかった。

 

 

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