ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

展覧会

私たちは何者?ボーダレス・ドールズ @松濤美術館

なにをもって人は、ものに自分の似姿を見いだすのか。 木の板に簡単な顔と名を描いただけでも、呪いの形代として機能する。 人形を見ていると、人は人をどんなものとして見ているのかが、なんとなくわかってくるような気がした。 呪いの形代から、お雛様、埋…

「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性」@東京ステーションギャラリー

妖しい女性を描く日本画家にして、映画衣装のデザイナーにして考証家。 自分も素人歌舞伎の演目で女形を演じる。 甲斐荘楠音をいろいろな面から照らし出す。 日本画もよかったが、圧巻は「旗本退屈男」シリーズの豪華絢爛、なんだこの柄は、な感じの派手派手…

顕神の夢 霊性の表現者 超越的なもののおとずれ @足利市立美術館

人の世のことわりのそとからくる、何らかのイメージを表そうとする。 そんな試みを芸術としてまとめた展覧会。 宗教者の書画が冒頭に来ることから、人を越えたものとは第一には神、とみなされているようだ。 あとは自然や光などと目される。 スサノオがなぜ…

鄙と楽園「憧憬の地 ブルターニュ展」@国立西洋美術館

海岸、牛、リンゴの木、農風景、民族衣装の頭巾を身につけた女。 フランスの異郷ブルターニュを描くときに、よく取り上げられるモチーフだ。 中央・パリから辺境、鄙であるブルターニュへの視線が、画面にはっきりと固定されている。 描かれた人物は女性が多…

典雅で残虐な愛「ルーブル美術館展 愛を描く」@国立新美術館

ルーブル美術館所蔵の西洋絵画、特に愛をテーマにした作品を展示していた。 愛というと、かわいらしいキューピッドや睦まじい恋人たちのイメージがあるかもしれないが、暗喩に満ちた訳ありげな、ドラマチックな絵画もあり、見ごたえがあった。 そして、男性…

「子どもと不条理:それでも世界は生きるに値する 第Ⅰ期『子どもと戦争』」@聖心女子大学

聖心女子大学内で行われている展示。 美術作家の遠藤薫が戦時中に落下傘を作っていた女子工員にインタビューした映像と落下傘、作家・マンガ家の小林エリカによる実父の日記とアンネの日記をモチーフにした作品や、ノンフィクション作家の野村路子が調査した…

お祓いの正統性の由来「祓-儀礼と思想-」@國學院大学博物館

わりと専門的な展示。 茅の輪くぐりや夏の大祓いなど、たまに見聞きするお祓いとは、どんな由来があり、どのように伝播し、変遷していったのかを、各種文書を通じて浮かび上がらせる。 もともとは宮中行事で、それが伊勢神宮の御使などによって地方の神社へ…

「異界彷徨 怪異・祈り・生と死」@大阪歴史博物館

面白かった。 まじないや、祈祷、験担ぎにまつわるさまざまなものとその由来が展示されている。 蟹の甲羅で作られたお面や、関東大震災の避難民向けの告知に描かれたナマズなど、イメージの作られ方、使い方が面白い。 昭和初期の寿司の商工会が作った恵方巻…

佐伯祐三 ー 自画像としての風景@大阪中之島美術館

とても混んでいたが、わたしには残念ながらよさがわからず。 風景や建物にあまり興味がないのかも知れない。 あと、中之島美術館は常設展はないのでしょうか。。。 nakka-art.jp

みっちりと虚無僧『発掘・植竹邦良 ニッポンの戦後を映す夢想空間』

駆け込みで観に行く。 リアリズムではなく、スーパーリアリズムを模索した画家、植竹邦良の展覧会。 幻想的にもみえる、執拗に繰り返され画面を覆い尽くすモチーフは、安保闘争のさなか寝転んだ東京駅のドーム天井や、通勤電車、戦時中の東アジア地図など、…

ラテンアメリカの民衆芸術 @国立民族学博物館

大阪の民族博物館で開催。 実際にラテンアメリカで人々が作り、手にする日常的な品々。 おもちゃや、衣装から、壁画まで、さまざまなものが集められている。 鮮やかな色彩や、異なる材料をミックスしている感覚が面白い。 また、歴史的、宗教的、政治的な題…

企画が素晴らしい ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―@金沢 国立工芸館

朝一の予約時間帯で行ったが、外に長い行列ができていて、大変混んでいた。 とはいえ、予約なしでも待てば入れるようにしていて、良心的。 ポケモンを現代に生きる工芸作家たちが表現した作品展。彫金、陶芸、ガラス工芸、レース編み、織物等々、さまざまな…

ひかりはどこから 池田晃将 虚影蜃光@21世紀美術館

ポケモン工芸展とはしごして行く。 美しい、うっとり。 伝統技法が、こんなSF的な表現にしっくりくるとは! 螺鈿がまるで、電脳世界のもののよう。内側から光っているみたいなのだ。 作品の他、池田氏の道具や私物、資料も展示してあり、 中に『ニーアオート…

一枚に濃厚な物語がある「幕末土佐の天才絵師 絵金」@あべのハルカス美術館

もう終わってしまったが、前期と後期を鑑賞した。 今のところベストかもしれない。 幕末から明治初期に土佐で芝居絵屏風を数多く残した絵師、金蔵。 人呼んで絵金。 元々は藩の家老おかかえ絵師だったが、贋作騒動に関わり、町絵師に。以来、絵の師匠をした…

世界に耳をひらく『ダムタイプ|2022: remap』

坂本龍一がサウンドデザインを手掛けたことが話題の2022版を、アーティゾン美術館にて再構成したもの。 暗い部屋の周辺にいくつも置かれた、透明なディスクから、世界各地で録音された音が鳴り出す。中国の団欒、ロンドンの鐘、地球のどこかの雨の音。 ふだ…

趙根在写真展 地底の闇、地上の光 ― 炭鉱、朝鮮人、ハンセン病 ―@丸木美術館

中学三年生から、家庭の事情で炭鉱で働き、後に当時隔離政策のため療養所で暮らしていたハンセン病患者、とくに在日朝鮮人を撮影した趙根在の写真展。 ハンセン病患者たちの生活のワンシーン、さまざまな人々の表情、その一方で療養所の高い高い壁など、国内…

男二人の道行きは心中『仕掛人・藤枝梅安2』

昔、映画論の授業かなにかで、任侠映画のラスト、主人公と助太刀の男が雪降りしきるなか二人行くシーンの解説で、これは浄瑠璃の心中物を原典にしていて、一歩一歩感情が高まり、最後に死(心中、斬り合い)に至る、と聞いた。 その事を久しぶりに思い出した。…

今井俊介 スカートと風景@オペラシティアートギャラリー

揺れるスカート、そのうつくしさを、世界の、風景の姿として描く。 ドレープの遠近、色の取り合わせの乱雑な鮮やかさ。 うっとりする。 遠くまでいかなくても、非日常を感じられる。 一般的な展覧会では、タイトルやキャプションに何らかの言葉で作品解説す…

吹きガラス 妙なるかたち、技の妙@サントリー美術館

ガラスの不思議、とくに吹きガラスの優美な曲線を堪能できる展覧会。 ローマ時代の物から、現代美術のガラス作品もあり、そのかたちに驚かされる。 ガラスという割れやすい素材で、よく時代を越えて残ったなあ、と思う大作も! 現代の作家が、手法を解説する…

THE ORIGINAL@21デザインサイト

選考委員が選んだ、オリジナルなデザインのプロダクトが時代をおって展示されている。 いろいろ見られて面白いが、なにかがオリジナルであること、その魅力を伝えるためには、そのものだけ見せてもよくわからない。 それまでのデザインの趨勢や、その後の影…

さばかれえぬ私へ 志賀理江子 竹内公太@東京都現代美術館

すっかり忘れて、都合のよいときだけ思い出して、復興ととなえて、 お金を注いで、暮らしを巻き上げて、声を潰して、 そんなふうに、ずうっとやってきた。 自分がそんな共同体に属している、事実を認識させる。 ずどんとくる展覧会。 www.tokyoartbeat.com

ものはいいが、展示がいまいち「橋本コレクション展 ―指輪よりどりみどり」国立西洋美術館

国立西洋美術館に寄贈された一大指輪コレクション、 橋本コレクションの一部を常設展の版画展示室のなかで、 こぢんまりと展示している。 珍しい形の指輪や歴史的な指輪、有名ジュエラーの指輪など、出ているものはよいし、宝石の蛍光の仕組みの解説などもあ…

展覧会「重要文化財の秘密」 問題作が傑作になるまで@東京国立近代美術館

国宝展より、解説がメタ的というか、何がどう選ばれてきたのかが、語られていて面白かった。。 どういうものがよしとされ選ばれてきたか、選評なども引用されて、変遷もしめされる。 目玉はいろいろあり、教科書で見たことある作品も多い。 横山大観の『生々…

ひらかれた部屋は世界と同じくらいひろい 展覧会「部屋のみる夢」 @ ポーラ美術館

エドゥアール・ヴュイヤールの描く親密さに満ちた部屋、 ヴィルヘルム・ハマスホイの描く底知れぬ他者がいる部屋、 無人であっても、部屋には人の気配が色濃く移る。 時代や社会や人間が部屋には反映されるのが面白い。 日本のアーティストの作品が、…

技の芳幾、熱の芳年「芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル」@三菱一号館美術館

とても見ごたえがある展示。 浮世絵からでて江戸末期から明治初期に武者絵や新聞画でも活躍した二人の絵師の画業を時代を追って展示している。 芳幾はなんでもうまく描くがが熱意に欠ける、芳年は不器用だが熱を感じる、と当時の評論に書かれていたが、うま…

織物とクジラ「江上幹幸コレクション インドネシアの絣・イカット ~クジラと塩の織りなす布の物語~」@たばこと塩の博物館

売店で、江上さん私蔵の実際のイカットが売っている! 高いけどほしい、展示を見たあとだと、なおほしくなる。 インドネシアのある地域で作られる布、イカットはクジラ漁を起点にした海の民と山の民の交易で生み出される。 めんめんと続く男たちの命がけのク…

話し合うことの力「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」東京都現代美術館

だれかとなにかについて話すことは、それだけで作品になるくらい、強度がある。 オランダの植民地支配、映像学校での女性差別、日本の戦中期の女性作家、住宅供給など、当事者や資料を読んだ参加者たちが、真摯に相手の言葉を聞き、自分の言葉を返す。 全部…

毒展@国立科学博物館

内容はよいのだろうが、人が多すぎて、満足に見ることができなかった。 時間帯予約で、定員いっぱいの日に行った。人の頭を見に行った感じ。子どもさんも多く、「見えないー、見たいのにー」と泣いている子もいた。同感である。 展示室の設計の問題が大きい…

老人の肌の見応え 諏訪敦「眼窩裏の火事」@府中市美術館

写実絵画というと、若く美しい女性などを精緻に描くようなイメージがあったが、「眼窩裏の火事」で、最もよかったのは老ダンサーの裸体を描いた作品だった。 たるんだ皮膚、点在するシミ、皺深い顔、ぼんやり空いた口の闇。その人自身としての身体、存在とし…

ここが夢の国か『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』

ファッションに一ミリも興味がない人も、たぶん楽しい空間。 展覧会好きは必見ではなかろうか。 とにかく、別世界に誘う展示空間のリッチさ。 纏う人をプリンセスにするのがディオールの服なら、展示物のポテンシャルをひきだし、ゲストを魅了するのが今回の…