ときよとまれ

みたもの、きいたものなどのまとめブログです(映画、演劇、展覧会 感想備忘録)

2023-01-01から1年間の記事一覧

亀でもミュータントでも青春したい! 映画「ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!」

CGアニメは、均一でぬるぬる動く方向に進んでいたが、ここに来て「絵」を立体的に動かす、という進路の作品が出てきた。「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」、そして本作もだ。 絵がそのまま動き、かっこよく気持ちいい。 レオナルド、ミケラ…

かわいいおしゃれかっこいい「大正の夢 秘密の銘仙ものがたり」展@弥生美術館

眼福の展覧会。 女学生など若い女性から一世を風靡したモダンで鮮やかな柄が特徴の銘仙。 コレクター桐生正子氏の集めた銘仙が、大野らふ氏による当時のバッグや日傘までイメージしたコーディネートで見られて、展示点数のわりに見ごたえのある展示である。 …

女性映画アンソロジー「私たちの声」

世界各国の女性監督が撮った女性主人公の短編映画アンソロジー。 日本からは呉 美保が参加。杏主演で二人の子を育てるシングルマザーの毎日を描く「わたしの一週間」を製作している。 ほかにもロックダウン中のロサンゼルスでホームレス支援に取り組む実在の…

ジャム・セッション山口晃 「ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」、創造の現場ー映画と写真による芸術家の記録@アーティゾン美術館

ジャム・セッション山口晃 「ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」 山口晃によるセザンヌ鑑賞教室が白眉。 雪舟もある。近づくと見にくいように照明されており、遠くから見て近づきたいと思うと霞む幻の風景だった。 全体に山口晃は作品も見事だが、言…

個人美術館のよさ「シャガール展」@静岡近代美術館

静岡で衣料品店とパーキング業を営むという大村明氏の個人コレクションの美術館。 静岡駅から程近い、閑静な住宅地にある。 内外の近代絵画がメインで、行ったときはシャガールの展示をしていた。ほかにも梅原龍三郎、レオナール・フジタなどの絵もあり、二…

美術館はすごいが、、@MOA美術館

熱海は若者の町。というほど若い人が多かった。 MOA美術館は世界救世教の美術館。本部に隣接している。創始者岡田茂吉が芸術も好んだということで、いろいろ名品があるらしい。「顕神の夢」展に続き、宗教者と芸術の関わりを見る。 「紅白梅図屏風」は2月だ…

真におぞましきは 映画「骨」「オオカミの家」

「骨」と「オオカミの家」の同時上映。 「骨」は、発掘された映像を修復したもの(という設定)。チリのかつての権力者を、ある少女が骨からよみがえらせ、ひとつの契約を消す。 「オオカミの家」は、あるコロニーから逃げ出した少女マリアが、なんとか自力で…

わからないという自由「あ、共感とかじゃなくて」@東京都現代美術館

わかりそうで、わからなくて、でもそれもいやではない。 そんな気分になる展示。 印象に残ったのは、就職フェアのような企業ブースを模した有川滋男の作品。一見してわからない仕事をしている動画が流れていて、わからないけれど、当事者にとっては大切な仕…

悪魔は冗談を嫌う「ヴァチカンのエクソシスト」

実在のエクソシスト、アモルト神父をラッセル・クロウが演じるホラーミステリー。 ある教会に引っ越してきた家族に異変が起きる。息子の様子がおかしくなり、悪魔を名乗る。ヴァチカンから派遣されてきたアモルト神父と、現地のトマース神父は、怯える家族と…

宛先の強度「あなたのアート誰に見せますか?」@東京芸術大学陳列館

明確な宛先があるものは、届きやすいのか。 そうでもないのでは、というのが本展の感想だが、私が宛先になっていなかっただけかも知れない。 メラニー・ボナーヨの作品が強烈なのは、身体感覚のある者すべてに訴えかけて来るからだろう。ネット上の感想をい…

ボーダーを越えて行け『木ノ下歌舞伎 勧進帳 2023ver.』

歌舞伎や能など日本の古典演劇をもとに、現代劇の役者が現代の身ぶりで演じる木ノ下歌舞伎で、何度か再演されている「勧進帳」(アフタートークつきの回)を観てきた。 80分ほどでコンパクトで、古典を知らなくても、知っていても面白い舞台だった。 兄の頼朝…

「虫めづる日本の人々」@サントリー美術館

虫と虫に関わる人の営みを描いた絵や蒔絵など日本の美術館を集めた展覧会。 入ってすぐ虫の声が聞こえて典雅な気分。 植物の絵に蝶以外の虫もいろいろ書き込まれているのは、ふだんあまり意識していないので面白かった。 また、虫取に興じる女性たちを描いた…

かわいいでは終わらない映画『マルセル 靴をはいた小さな貝』

引っ越し先で見つけた小さな貝のような生き物。ひとつ目の彼は人の言葉をしゃべり、マルセルと名乗る。主人公は彼の動画を撮りはじめる。彼は離ればなれになった家族を探すため、主人公に協力を求める。 実写とストップモーションアニメを組み合わせた作品。…

静かな超能力バトル「イノセンツ」

ノルウェーのサイキックホラー映画。 ある団地に越してきたイーダは、重い自閉症で意思の疎通もできない姉アナのめんどうを見るよう言われ苛立っていた。休暇の時期で人は少なかったが、イーダは別の棟に住むベンと友達になる。一方アナもアイシャという友達…

ヒロインも人間なので『人間ぎらい~メランコリックな恋人 喜劇5幕~』

フランスの古典演劇「人間ぎらい」、初めて観たが面白かった。 主人公アルセストは虚飾をきらい、とにかく正直に思ったままを口に出すことをいとわない。そのため社交界の人間関係に馴染むことができず、友人フィラントの常識的な人付き合いのしかたを批判し…

寝込みを襲う虎のような女「エリザベート1878」

宮廷生活に押し潰され、苛立ち疲れ果て、旅に出るオーストリア皇妃エリザベート。 宝塚のミュージカルでも有名な人物を、史実とはずらした作劇で描く映画。 エリザベートは疲れ、苛立ち、それでも自由を手に入れるため、もがく。 原題は『コルセット』であり…

「出来事との距離-描かれたニュース・戦争・日常」展@町田市立国際版画美術館

印象に残ったのは、ゴヤがスペインの対仏独立戦争を描いた『戦争の惨禍』と松元悠が実際のニュースをもとに描いた作品。 見聞きしたニュースを自分がさらに他の人に伝えるとき、表現によって、ニュースは変化する。絵でなくても、ちょっとしたことば遣いで内…

色気は男が出すもの 『仕掛人梅安』

藤枝梅安シリーズがテレビで放送されていると、つい見てしまう。 バイオレンス時代劇としてテンポよく面白い。 冒頭、ある仕掛け(殺し)の仕事で、父の仇と狙った浪人にとりこまれ、お稚児のように扱われている少年が出てくる。少年の母の依頼で浪人は殺され…

討論はこんなに面白い!『ベスト・オブ・エネミーズ』@ナショナルシアターライブ

すごい面白く、洗練されていて、遠くから撃ち抜かれるよう。 上映期間が短いので、興味があれば素早く見に行った方がいい。 ボールドウィンの言葉が重い。 業界最下位の放送局の新企画は、大統領選前の共和党、民主党の党大会にあわせ両陣営の論客を生番組で…

物語に身をゆだねて 映画「古の王子と3つの花」

現代のどこか、工事現場が見えるところで、語り手が聞き手に問いかける。 どんなお話がいい? 聞き手は好き勝手にこんな話!といっていき、語り手は3つのお話を語り始める。 古代エジプトのファラオの話、中世フランスの領主の息子の話、そしてトルコで国を…

小さいものは小さいまま「デイヴィッド・ホックニー展」

小さいものは小さいまま見せる方がよいのでは、と思った。 ipadで描いた絵はとくに、実寸の方がたぶんだいぶよく見えるはずだ。 壁画や大きな絵も、遠くから、見る方が、いい絵に見えると思う。 細かく見ると、とてもざっくり描かれているのに、遠くから全体…

眩暈がするほどゴージャス「ムーラン・ルージュ! ミュージカル」@帝国劇場

バズ・ラーマン監督のミュージカル映画「ムーラン・ルージュ!」を舞台化したオーストラリア発の作品。 会場のセットは驚くべきクオリティ! 左に真っ赤な風車、右には象! 中央には電飾でMoulin Rougeと掲げられている。 上演の少し前から、キャバレーの踊…

一周まわったハッピーフェミニズム映画『バービー』

最初見たときは、フェミニズム最初の一歩的な内容だな、と思ったが、後からじわじわ、どこをめざしている映画かわかってきたような気がする。 バービーランドでとても幸せに暮らしている一般的なタイプのバービー(マーゴット・ロビー)は、ある日なぞの不調に…

ただ愛するのはお金だけ!『守銭奴 マネークレイジー』

映像で観た。 守銭奴アルパゴン(佐々木蔵之介)は、召使いをこきつかい、息子(竹内將人)と娘(大西礼芳)はいずれ金持ちと結婚させて持参金をせしめようと考えつつ、お金を溜め込んで暮らしていた。そんなある日、アルパゴンは近所の若い女性と再婚をしたいとい…

「ちゃんとしてる」と落ちる罠 映画『波紋』

ある日、依子の夫は失踪する。依子は夫の父を介護し見送り、息子を育て、新興宗教に入信し、スーパーマーケットのパートで働く。 そして数年が経って、夫が突然もどってくる。ガンだという。久しぶりに帰省した息子は耳の聞こえない恋人をつれてきた。 依子…

大きな人形というだけで怖い『M3GAN ミーガン』

おもちゃの開発者である主人公は、両親が不慮の事故にあった姪を引き取る。深く傷ついた子どもにどう接したらいいのかわからず、気まずい毎日のなかで、子どもとコミュニケーションをとって、守り導く人形を開発し、姪に与える。 姪はミーガンに心を開き、明…

私たちは何者?ボーダレス・ドールズ @松濤美術館

なにをもって人は、ものに自分の似姿を見いだすのか。 木の板に簡単な顔と名を描いただけでも、呪いの形代として機能する。 人形を見ていると、人は人をどんなものとして見ているのかが、なんとなくわかってくるような気がした。 呪いの形代から、お雛様、埋…

内省的なヒーロー映画「ザ・フラッシュ」

神速のヒーロー、フラッシュが過去の改変に挑み、あきらめを知る物語。 期せずして、『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』と同じテーマを扱っている。 運命(変えられない過去/未来)を受け入れるか、否か。 フラッシュは過去の自分とのやりとり…

「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性」@東京ステーションギャラリー

妖しい女性を描く日本画家にして、映画衣装のデザイナーにして考証家。 自分も素人歌舞伎の演目で女形を演じる。 甲斐荘楠音をいろいろな面から照らし出す。 日本画もよかったが、圧巻は「旗本退屈男」シリーズの豪華絢爛、なんだこの柄は、な感じの派手派手…

顕神の夢 霊性の表現者 超越的なもののおとずれ @足利市立美術館

人の世のことわりのそとからくる、何らかのイメージを表そうとする。 そんな試みを芸術としてまとめた展覧会。 宗教者の書画が冒頭に来ることから、人を越えたものとは第一には神、とみなされているようだ。 あとは自然や光などと目される。 スサノオがなぜ…